家は「建てたら終わり」ではありません。上質で自分らしい住まいを存分に楽しみ、心豊かに暮らし続けたいものです。このコーナーでは、テラジマアーキテクツで家を建てた施主の皆さんに、自宅での毎日を彩るさまざまなアイデアをそれぞれの視点から紹介いただきます。
今回のプレゼンターは…
二口 京子さん
東京造形大学テキスタイルデザイン科卒業後、ニューヨークのデザインスタジオに在籍。テキスタイルペーパーデザイン、ウォールペーパーデザイン、洋食器絵皿デザイン、テーブルウェア、舞台芸術等を幅広く手掛ける。帰国後も生活全般のデザインを行いながら、現在は先人達が遺したさまざまな事や物に対する表現や暮らし方を模索中。
生活の一部である井戸水
井戸のある家はどれくらいあるでしょうか。我が家には昔から井戸があり、水道が普及する前までは食事やお風呂に至るまで井戸水を利用していました。時代が変わり、飲料用などの生活用水は水道水に切り替わりましたが、その柔らかな口当たりから、母はお茶をたてる際にあえて井戸水を使っていましたし、私も仕事で染色をする際にその発色の良さから井戸水を使用しています。
家を建て替える際にも、私は井戸を残す決断をしました。最近は古井戸を撤去するお宅が多いと聞きますが、井戸は家族にとって生活の一部であり、さまざまな恩恵を今でも与えてくれています。
井戸のメリット
地下数十メートルに流れる地下水は、地上の温度の影響を受けにくいため、水温が一定です。一般の水道水は地表近くを通っているため、夏は暖かく冬は冷たいですが、井戸水は、夏は冷たく冬は暖かく感じます。
さらに経済的なメリットもあります。庭にさまざまな植物を植えている我が家では、多くの水を使うので、植物の水やりも、井戸水を使えばお金がかかりません。ほかにも、野菜を冷やしたり、孫が遊んで帰ってきた際に泥汚れを落としたり、井戸水を活用する場面はたくさんあります。
元旦の早朝、井戸や湧き水から最初に汲む水を「若水」といい、一年の邪気を払う縁起の良いものとされています。井戸から汲む若水で墨をすって、元旦始筆をするのも我が家の恒例です。
その他にも忘れてはいけないのが、災害時に防災井戸として活用できることです。巨大な自然災害発生時、ライフラインである水道が遮断されてしまうケースは多いですが、井戸があれば自家用水はもちろんのこと、周辺住民に供給することも可能です。もし古井戸があるなら、蘇らせるというのも一つの手かもしれませんね。
More Life Lab.編集部より
古井戸の再生・解体方法
Fさんのお話から、井戸水の使い道は生活用水から防災まで多岐にわたっていて、日本文化が生きる豊かさをもたらしてくれることが分かりました。古井戸のあるお宅は以下のことを参考に、暮らしに役立ててくださいね。
古井戸を再生する場合
しばらく使っていなかった井戸を新しく使い始める際には、自治体の指定する水道局業者などに相談をし、井戸が汚染されてないか、生活用水として使えるかなどを調べる水質検査を行うことをお勧めします。地域によっては、守られてきた井戸の清め方やお祓いの仕方があるようなので、水質検査を依頼する業者やご近所の年配の方にお聞きしてみると良さそうです。
井戸の解体・埋め戻し
古い井戸を今後使わず、処理したい場合には、井戸の解体(埋め戻し)を行う必要があります。日本では昔から井戸には神様が宿っていると考えられていたため、井戸を埋め戻す際は、地域の風習によって井戸を清め、お祓いをし、「息抜き」を行ってから、専門業者が井戸を清掃し、内部の水とガスを抜いて、穴を埋め直して地盤を整える工事を行うことが一般的のようです。井戸の「息抜き」やお祓いのことも地域の専門業者に聞いてみることをお勧めします。
井戸をお持ちの方は、建て替えやリフォームをされる際に、井戸を生活の一部として取り入れることを検討されても良さそうですね。地域の習慣や風水における留意点などを含め、建築家に相談しながら進めていきましょう。
エッセンス
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