家は「建てたら終わり」ではありません。上質で自分らしい住まいを存分に楽しみ、心豊かに暮らし続けたいものです。このコーナーでは、テラジマアーキテクツで家を建てた施主の皆さんに、自宅での毎日を彩るさまざまなアイデアをそれぞれの視点から紹介いただきます。
今回のプレゼンターは…
二口 京子さん
東京造形大学テキスタイルデザイン科卒業後、ニューヨークのデザインスタジオに在籍。テキスタイルペーパーデザイン、ウォールペーパーデザイン、洋食器絵皿デザイン、テーブルウェア、舞台芸術等を幅広く手掛ける。帰国後も生活全般のデザインを行いながら、現在は先人達が遺したさまざまな事や物に対する表現や暮らし方を模索中。
ぬか床づくりはとてもシンプル
日本の家庭で古くから親しまれる「ぬか漬け」。最近は発酵ブームもあり、手軽に始められるキットを使いぬか漬けを楽しんでいるというご家庭も多いかもしれません。私の家では母の代から100年近くずっとぬか床を育てています。春になり、おいしい野菜が商店に並びだすと、私とぬか床との暮らしが始まります。
冬の間は乳酸菌の活動が鈍く発酵に時間がかかるので、ぬか床を冬眠させているんです。表面に5mmほど塩蓋をして保存していたものを、春になるとかき混ぜ、準備を始めます。そして秋までぬか漬けを楽しみ、また冬になると冬眠させる。そのサイクルを繰り返しています。自分でぬか床を育てるというと難しそうに聞こえますが、実は材料も作り方もとってもシンプルです。
ぬか床を最初からつくるために必要なものは、基本的には糠と塩と水だけです。米ぬかに塩水を加え、全体的に重たくなり、味噌のようにぼてっと握れるくらいになるまで混ぜるだけ。ベースができたら保存容器に移し、大根の葉っぱなどの捨て野菜を入れます。これはぬか床が発酵するための栄養分と水分を補うため。捨て野菜が入ったら表面を軽くならし、手のひらできゅっと表面を押し付けて空気を抜きます。保存容器の側面などは清潔なふきんで常にきれいにふきとり、蓋をしておきましょう。ここから捨て漬けを繰り返し、ぬか床を育てます。手に入る方は、貴重な昔からあるぬか床を加えると円やかなぬか床に仕上がります。2週間ほど繰り返せば、酸味もしっかり出てきておいしいぬか床ができあがり。ここからはいよいよ本漬けです。好きな野菜を漬けていきましょう。保存するのは1階の日の当たらない冷暗所。冷蔵庫などは発酵が鈍くなるのでおすすめしません。
旬の野菜を漬ける楽しみ
ぬか床に入れる食材は、漬け方に工夫が必要なものもありますが、基本的には好みに合わせて好きな食材を使用していただけます。大根やきゅうりなどの定番の野菜はもちろん、旬のお野菜を使うのがいいでしょう。今の季節なら、春キャベツや新玉ねぎ、菜の花などもおすすめです。夏はおくらやみょうが。変わったもので言うと間引きメロンやアスパラなどもおいしいです。漬ける時間は半日〜1日ほどが目安。塩分や酸味の好みによって時間を調整してください。漬かりすぎて失敗したというときは、ぬか漬けを細かく切ってフレッシュなきゅうりやみょうが、生姜などと合えるとサラダ感覚でいただけます。
ぬか漬けがその家の味になるのは、入れるものによって風味が変わってくるからです。それぞれ好きなものを入れて楽しんでいただくことは大変いいことだと思っています。ぬか床の柔らかさの加減、漬かり具合などは毎日ぬか床に接しているとわかってくるものです。私は常にぬか床と対話をしています。そろそろ塩を足して、そろそろぬかを足して、とぬか床が教えてくれるんです。ぜひ自分のぬか床を育ててみてください。暮らしが少し愛おしくなりますよ。
エッセンス
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