家は「建てたら終わり」ではありません。上質で自分らしい住まいを存分に楽しみ、心豊かに暮らし続けたいものです。このコーナーでは、テラジマアーキテクツで家を建てた施主であり、様々な分野のプロフェッショナルである皆さんに、自宅での毎日を彩る丁寧な暮らしのアイデアをそれぞれの視点から紹介いただきます。
今回のプレゼンターは…
二口 京子さん
東京造形大学テキスタイルデザイン科卒業後、ニューヨークのデザインスタジオに在籍。テキスタイルペーパーデザイン、ウォールペーパーデザイン、洋食器絵皿デザイン、テーブルウェア、舞台芸術等を幅広く手掛ける。帰国後も生活全般のデザインを行いながら、現在は先人達が遺したさまざまな事や物に対する表現や暮らし方を模索中。
世代を超えて受け継ぐということ
お宅に眠っている桐たんすはありませんか? 一家に一台、昔から桐たんすを使う家庭は多くありました。しかし、近年は「古い」「汚い」「新しい家に合わない」などの理由で、昔のものは捨てられがちです。我が家には母の嫁入り道具の桐たんすがずっと置いてありました。今回はその話をしたいと思います。
家を建替える際、私はこの桐たんすをぜひ空間の主役として使いたいと思いました。桐たんすは防虫効果もあり、耐久性の高い家具として世代を超えて受け継ぐことができる優れた工芸品です。これを活かさない手はありません。そこで、日常使いしやすいよう食器棚へリメイクし、使うことを前提に建築家の方と話を進め、桐たんすを置く空間全体の色味など、調和をはかった設計に仕上げていただきました。
実際に桐たんすを食器棚として使ってみると、想像以上に使い勝手が良いことに驚きました。触り心地も、存在感も、全体的に柔らかい印象があり、何度も開け閉めしたくなるほどです。
百年残る価値があるかどうか
家の建替え時には多くのものの処分を検討することになると思います。私が捨てる基準にしたのは、「単体で存在していてもあと何百年も残る価値があるかどうか」でした。新建材の家具はたくさん捨てましたが、この古い桐たんすはどうしても捨てられなかった。
この桐たんすは単なる思い出の品ではなく、残る価値が十分にあるものだと考えています。そしてただ古いから残すのではなく、使うから残すのです。今ではこのたんす以外のものを食器棚として使用するイメージが沸かないくらい生活に馴染んでいます。
なんでも手軽に買ったり捨てたりができる時代ですが、本当に素晴らしい価値のあるものは、しっかりと残し、受け継ぐべきだと思います。今まで家の隅に追いやられていた古い家具が、空間の主役となってよみがえることもあるんですから。
More Life Lab.編集部より
アンティーク家具のリメイクと建替え
お母さまが使われていた桐たんすをおしゃれな食器棚へリメイクし、和モダンなインテリアとして再活用している二口さま。このように、家を新築・建替えるからといって、家具を総入れ替えする必要はありません。新しい場所でも古き良きものが引き続き役目をまっとうしていくことは、モノの価値を生かしてしっかりと使い切ること。これも豊かで丁寧な暮らしに欠かせないことですし、お施主さまならではのおしゃれな家の一要素になるでしょう。
注文住宅なら、思い出の品や、古くから家族に大切にされてきた家具や建具を引き継ぎ、それらに合わせて空間をデザインしたり、新しい建具に組み込むことも可能です。使い慣れたインテリアや建具は、きっと新居に落ち着きと安心感をもたらしてくれるでしょう。心当たりのある方は、工務店や建築士に相談していただければと思います。
もし桐たんすの置き場に困っていたら、二口さんのようにおしゃれな食器棚や下駄箱など今のライフスタイルに合わせたインテリアへのリメイクを検討してみてくださいね。
エッセンス
-
暮らしを彩る テーブルがさらりと華やぐ、植物コーディネートの3アイデア
親しい友人との気軽なホームパーティや、ちょっと盛り上げたい家族の食事には、日常を切り取ったお花のテーブルコーディネートが素敵です。フラワ...
-
暮らしを彩る センス良くバルコニーを彩る 植物の配置のルール
前回は、1本目となる鉢植え植物の基本的な選び方と、植栽の増やし方をご紹介しました。続いては、空間に合わせたまとまりのあるディスプレイの方法...
-
暮らしを彩る クリスマスパーティを思い出深くする3つのポイント
お子さまがいらっしゃるご家庭で、機会の多いパーティといえばお誕生日とクリスマスではないでしょうか。どんなパーティでも、お家に人を呼ぶとな...
-
暮らしを彩る 美しく住むための清掃術 そうじに追われないコツ
部屋をクリーンな状態に保って暮らしの質を上げていくためには、整理収納と適切な掃除の両方が大切です。しかし、忙しいとつい溜めてしまいがちな...
-
暮らしを彩る 美しく住むための整理術2 きれいな部屋をキープするコツ
苦手と自称する方の多い家事として良く挙げられる「掃除・片付け」。キレイな空間を維持するにはコツがあります。今回は
-
暮らしを彩る 美しく住むための整理術1 片付けのしくみを作る
苦手と自称する方の多い家事として良く挙げられる「掃除・片付け」。キレイな空間を維持するにはコツがあります。今回は片付けのルール作りをテー...
-
暮らしを彩る テーブルはシックに、お料理は華やかに。クリスマスのおもてなし。
パーティの機会が多くなるクリスマス。楽しく、そして少しラクになるおもてなしのコツをお教えします。
-
暮らしを彩る カジュアルな夏料理を愉しむおもてなし
外出は最小限に、家で家族と過ごす生活が続いていませんか。そこで今回のテーマは「家族で楽しむ夏レシピ」。親しみのあるお料理をアレンジして特...
-
暮らしを彩る 今でも大活躍中! 井戸のある丁寧な暮らし
家を建てるとき、敷地内に井戸があったら? 井戸水は飲用には適さないものの、様々な活用法があります。都内で丁寧な暮らしを体現しているFさんの...
-
暮らしを彩る 間接照明で心地よい陰影を楽しむ方法
今回はひかり造形家・篠崎里美さんがナビゲーター。光だけでなく、陰影によってさらに心地よい空間を提案しています。