まず、空間の特徴を把握することから

植物が決まったら、同時にどこに何を配置するかという空間構成を考えていけるといいですね。そのためにまず、植物を飾る空間の特徴をつかんでおきます。こちらH邸の場合、舞台となるのは約5帖の 広々としたバルコニー。こちらのバルコニーはLDKの間口いっぱいにつながっていて、天井は吹き抜けており、ルーパー（縦状の格子）の壁が印象的です。

それらをふまえると、LDKから眺めたときに違和感がなく、広い面積でもメリハリや立体感があり、ルーパーのモダンな美しさを引き立てる鉢植えの配置が望ましい、ということになります。

H邸にはしっかり高さのあるオリーブとシマトネリコがあるので、それらを左右に配置すると、縦方向に伸びやかな植物空間ができあがります。そこへ背の低いウエストリンギアやフレボディウム、アメリカヅタなどが足下を固めているのですが、これだけだとボリュームが上下左右に分かれてしまう印象です。

そこで、葉の面が大きく、どっしりと存在感のある旅人の木を中央に置き、中心に重点をつくったうえで、差し色にブーゲンビリアを入れて華やかさを演出しました。ブーゲンビリアはスタンド型のプランターに入れているので、背景の緑を隠すことなくちょうどよい高さにもってくることができます。

このような感じで、バルコニー全体の空間を見てバランスを取りながら、植物で立体感やメリハリを出していくと、まとまりのある魅力的な空間になっていきます。

室内の延長として鉢の色と質感を決める

理想のお庭の世界観を確立するためには、鉢の色と質感をこだわることが近道です。例えばバンブー素材を選べば中華風やオリエンタル風に、素焼きの鉢にペルシャ絨毯を組み合わせれば中東風にといった感覚ですね。

H邸の場合は、コーディネートをお任せいただいたので、LDKとバルコニーの雰囲気を生かして融合させるような鉢を選んでいます。H邸のバルコニーは、床は暗めのウッドデッキで壁がグレーというモダンな雰囲気。一方でLDKは明るいフローリングで壁と階段はともに白色、ソファも白味のあるグリーンで、全体的に軽やかで温かみのある印象です。

よって、バルコニーの鉢をダークトーンや無機質な素材にしてしまうと、印象がシャープになりすぎて室内と調和しなくなってしまいます。室内からバルコニーを眺めてもコーディネートされている印象にするために、鉢は素朴なテラコッタに白色をペイントしてあるもの、そしてブーゲンビリアを入れたスタンドは明るい色の木箱にアイアンの脚がついたものを選びました。

もし、植栽の配置や鉢のコーディネートに悩んだら、一度写真を撮ることをおすすめします。スカスカになっている場所はないか、反対に密集しすぎておらず適度な抜け感はあるか、お庭の雰囲気は理想のイメージに近いか、などを客観的に判断できると思います。