花やグリーンを買おうと思ったとき、「どんな花を、どんな空間に、どう飾ればいいのか」と悩む人は多いはず。
今回は、フラワーアーティスト・相澤桐子さんに、インテリアのテイスト別に花やグリーンの似合わせ方を教えていただきました。ウッド調のキッチンやナチュラルなリビング、モダンでクールな空間など、それぞれの雰囲気を生かす色・形・飾り方のコツをご紹介します。
今回のプレゼンターは…
相澤 桐子さん
フラワーアーティスト
19歳の頃に単身カナダに留学。花屋で学びながら、海外の花の文化に感銘を受けた。日本に帰国後、南青山のお店で最先端のアレンジメントやブーケのデザインを学ぶ。令和3年に世田谷区経堂にアトリエをかねたお店Loop.flower をopen。ブーケやアレンジメントのギフト販売のほか、花や植物を使用したバルコニーや室内のデザイン、イベント装飾や空間装飾を得意とし活動を続けている。2022年「FLOWER ARTIST EXTENSION 2022 in 東京ミッドタウン『街』を活けるアワード」特別賞・2024年「世界のらん展」アレンジメント出展など。
木を多用したインテリアには、枝ものと陶器で温かみを添える
まずは、流行に左右されず人気のある「木を使った温かみのある空間」をベースに考えてみましょう。木の空間には、自然の素材感と響き合う花や枝がよく似合います。特に、赤やオレンジ、朱色など暖かみのある色は木のトーンと調和し、空間全体にやわらかな印象をもたらします。
キッチンには、作業の邪魔にならないよう高さのある花瓶に枝ものを一枝すっと挿すのはいかがでしょうか。野ばらの実など実ものを3本ほど角度を変えて活けると、立体感と季節感が生まれます。赤いかわいらしい実が特徴の野ばらの実ですが、スタイリッシュな印象にしたい場合は、ドラセナなど深い色味の葉を合わせるのもおすすめです。
一方、ダイニングは視線を遮らない低めのアレンジがおすすめ。
光沢のない陶器の花器を使い、ベージュやオフホワイトのやさしい色味でまとめると、木のテーブルになじみながら花の色を引き立てます。
紅葉した葉と暗赤色のカラーなどを組み合わせれば、温かみのある食卓を演出できます。奇数本を基本に、上から見て三角形を描くように配置すると、どの角度から見ても美しいバランスに。
花をたくさん並べるよりも、枝を一枝、花を数本。そんな控えめな飾り方が、木の空間の持つ穏やかさとよく調和します。
モダンインテリアには寒色系の花で抜け感を
モノトーンやグレーなど、スタイリッシュな空間に合うのは、寒色系の花と直線的なライン。白やグリーンをベースに、ブルーを少し加えると、凛とした清潔感が生まれます。
花の形も、丸みのあるものより、茎がすっと伸びたタイプが似合います。花瓶もガラスや黒陶のような素材にすると、インテリアの硬質感と響き合います。
飾る場所は、リビングの一角や玄関のカウンターなど、空間に余白がある場所がベストです。寒色系のアレンジは、空間に静けさと抜け感をもたらしてくれます。観葉植物と合わせても調和しやすく、アートのように飾ることができます。
ナチュラルやフェミニンな空間には中間色を
白やベージュを基調にした、柔らかなインテリアには、ピンクやオレンジ、クリーム色といった中間色の花がよく映えます。
色のトーンをそろえることで、家具やカーテンと自然に調和し、穏やかな雰囲気をつくります。
おすすめはダリア。花びらが幾重にも重なり、華やかさと上品さを兼ね備えています。ピンク系だけだと甘くなりすぎる場合は、黄色やアプリコットを混ぜて柔らかく中和させると良いでしょう。花瓶は白やグレージュなど控えめな色を選び、花そのものを引き立てます。
ナチュラルテイストの空間では、自然光との調和もポイントです。花に朝日が当たる位置に置くと、部屋の印象までやわらかく変わります。
クールモダンな空間には、ブルーとグリーンで清涼感を
黒やグレーを基調としたシックな部屋には、ブルーやグリーンの花をメインにしたアレンジはいかがでしょうか。
デルフィニウムやクレマチスの青、グリーンのアンスリウムなどは、重厚な素材とのコントラストが美しく際立ちます。
差し色として黄色をほんの少し加えると、都会的な中にも温度を感じさせます。白・ブルー・グリーン・イエローの配色は、洗練された印象を保ちながら華やかさも演出できます。
花瓶は透明なガラスや黒陶を使うと、光を受けて立体感が増します。
まとめ:花を、空間の一部としてデザインする
インテリアに花を取り入れるとき、大切なのは“空間に合わせて選ぶ”という視点です。花そのものを主役にするのではなく、木の質感や壁の色、照明のトーンといった空間の要素のひとつとして考えると、自然とまとまりが生まれます。
ウッド調の温かみある空間には枝ものや陶器の花器を、モダンな部屋には寒色系の花とガラスを、ナチュラルな空間には中間色のやわらかな花を――。
素材と色の関係を少し意識するだけで、暮らしの景色は豊かに変わります。
花はインテリアの“仕上げ”であり、空間に命を吹き込む存在です。
部屋を飾るというより、整える。そんな気持ちで花を選ぶと、日常の中に心地よいリズムが生まれます。
エッセンス
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