開放性とプライバシーの両立
開放感があり、のびのびと寛げる空間。住まいにそうした要素を求める方は非常に多いと思います。
私は普段、都心や神奈川の住まいを設計していますが、開放感を求めようとすると近隣からの視線が気になる、プライバシーを重視して開口を小さくすると開放感が損なわれる… といった具合に、住宅が密集した地域での設計においては、いつでも「開放性とプライバシー確保の両立」が課題になります。その解決にはひと工夫が必要です。
そのためのアイデアは数々ありますが、取り入れやすい手法として、木やガラスを使った効果的な目隠しや、「フレーム」を活用する方法があります。
今回はM様邸の事例を通じて、そうしたアイデアをご紹介できればと思います。
快適な暮らしを守る”目隠し”
まず、M様邸について簡単にご紹介いたします。
この邸宅は都心に程近い、人気の住宅街の一角にあります。角地ではあるものの、隣家は2面とも非常に近接しており、人通りの比較的多い道路に面しているため、プライバシーの確保への配慮は必須のご要望でした。
建物はコの字型で、内側に中庭を擁しています。中庭は隣家側に向かって開いているため、有効なスペースとして活用するためには何かしらの目隠しを設置する必要がありました。
そこで、ちょうど視線が入る中庭の2階部分に、幅広の強化ガラスを設置しました。すりガラスは視線を遮り光を通します。また、数枚のガラス板をルーバー状に並べたことで、隙間から通風も確保することができ、室内の快適性を損なうことがありません。
ルーバーはガラス製のほか、木製のものがよく使用されます。木製のルーバーは今回のものに比べると細身で隙間の幅が広いことが多く通風に優れており、隣家との一定の距離があれば、角度をつけることで緩やかに目線を遮ることができます。また、木の質感を好まれる場合は、意匠の一部として取り入れることもあります。
一方、すりガラスのルーバーは主に乳白色で存在感が薄く、塀を立てるのに比べ隣家に圧迫感を与えづらいため、隣家が特に迫っている場合や、高い塀が必要な場合の目隠しに適しています。もちろん、ガラスならではの硬質でスタイリッシュな印象をデザインに取り入れたい場合にも有効です。
M様邸では、1階の中庭、2階のバルコニーはいずれも塀とガラスのルーバーにより囲まれています。2層の屋外空間のプライバシーが守られているため、中庭とバルコニーに面した窓にはカーテンをつける必要がありません。時には窓を開け放って屋内外を一体の空間として使用することもできます。住まいに開放感をもたらしてくれる、大切な要素です。
屋外を室内に取り込む
屋外空間を室内に取り込むことで、より開放的な住まいをつくることができます。
目隠し以外の”屋外を取り込む” 選択肢として、「フレーム」をご提案することがあります。
「フレーム」とは、屋外に出した梁や柱のことです。バルコニーや中庭、アプローチなど、建物に接した屋外の空間を囲い込むように設置します。
都市部の住宅地では、敷地の広さが限られており、建蔽率の制限も厳しい場合が多々あります。そんな立地で屋外の空間をより建物に取り込みたい場合に、フレームを設置することにより、「ここは自分の領域である」と空間を切り取る効果があります。M様邸では、バルコニーと中庭をフレームで囲うことによって、プライベート感をより強く体感することができるようにしています。
時に、「フレームが無いほうが青空を遮るものがなくて開放感があるのではないか」という心配をいただくことがありますが、実際に設置すると「やはりあって良かった」と多くの方がおっしゃいます。部分的に囲まれていることによる安心感と、室内では得られない開放感を楽しむには適した方法です。
どんな土地でも快適に暮らせるように
特に都市部の家づくりは、土地の制限との戦いです。また、周囲の建物との干渉をいかに防ぐか、同時に近隣に不快感を与えずに快適な住まいを形にするにはどうしたらいいか、騒音の問題など、課題はつきません。完璧な条件の土地はなかなかありません。
どんな環境でも心地よい住まいを実現するため、建築家は日々色々なアイデアを検討し、試行錯誤しています。その土地に適した方法を一緒に考えますので、ぜひ一緒によりよい住まいを作りましょう。
建築家 竹沢 孝浩
チーフ
完成した家は住まう人の五感に影響を与え続け、また成長・変容する余地を持っていなければなりません。家は住み始めてから本当の家になっていくのだと考えます。住宅設計を通して、住まう人のライフスタイル・想いをより美しく具現化するお手伝いをさせて頂きます。
メソッド
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