木の質感を空間の個性に
天井に木を張りたい、というご要望をお受けすることがあります。
室内に木を取り入れることで、温かみのある落ち着いた雰囲気を演出することができます。無垢のフローリングは一般的になりましたが、もっと木の質感を楽しみたい、という方にはおすすめのアイデアのひとつ。個人的に好きな要素であることもあり、ご要望に応じて積極的に取り入れています。
今回は「板張りの天井」の取り入れ方について、実例をもとにご紹介させていただきます。
ご紹介するのはE様邸。この邸宅では、リビングダイニング全体とリビングに隣接するバルコニーの軒天部分にかけて一面に木を張り、板張りの魅力を存分に楽しめる空間に仕上げました。

まず検討するのは「木を張る範囲」
通常、板張りの天井を取り入れるのに適しているのは高天井や吹き抜けのある空間です。木に存在感があるため一般的な天井高の場合、圧迫感が出てきてしまうことが多いためです。
E様邸のリビングダイニングは、天井高2.4mと一般的な住宅より少し高めではありますが、特別高いというわけではありません。天井の木板は長手方向に張ることで、存在感を示しながらもリビング空間に奥行きと広がりを与えました。
もし高天井や吹き抜けのある空間で取り入れる場合、敢えて天井いっぱいに張らず、少し空かして張ることで天井をより高く見せたり、隙間に間接照明を仕込むなどすることで雰囲気を出したりすることも可能ですので、「天井のどの範囲に木を張るか」は板張りの天井を考える際のひとつのポイントになります。

木を張る範囲を検討する際、キッチンなど火気のある空間や、邸宅の立地により防火地域など制限がある場合もありますので、まずは建築家に相談してみるのがよいでしょう。例えば木材に不燃の処理を施すことで、制限をクリアできる場合もあります。
屋外に用いられる木材は「サーモウッド」といい、予め加熱処理を施したものであるため、反りや経年劣化がしづらく、そうした処理をきちんと施していれば、基本的にはメンテナンスは不要です。

他のインテリアとの親和性
樹種選びも空間の雰囲気を大きく左右するポイントです。
天井に用いられる木材の樹種は数々ありますが、E様邸では欧州赤松を採用しています。E様邸のように床と天井が近い場合、フローリングと色を揃えるとインテリアに統一感を出すことができます。高天井の場合は、上の他の邸宅の事例のように、あまり気を使わず自由に選んでも問題ありません。床がフローリングではなくタイルなどの場合でも、違和感なく採用することが可能です。
明るい色の樹種を選べば若々しく軽やかな雰囲気に、E様邸のように落ち着いた色の樹種を選べば上質さや重厚感、温かみを強調します。
天井に存在感がある分、家具はシンプルなものでも充分絵になる空間が仕上がります。インテリアの組み合わせにあまり自信がないけれど、おしゃれな空間を実現したい、というお考えの方にも、「板張りの天井」はおすすめしやすい要素です。
自然素材が生み出す心地よい空間
板張りの天井に限らず、漆喰の壁や裸足で歩ける無垢の床など、自然素材を住まいの空間に取りいれることで、家族の寛ぎの空間をより心地よく、上質でやわらかい雰囲気に仕上げることができます。
家は暮らしの中心であり、ご家族にとって人生の長い時間を過ごす特別な場所。帰りたくなる、ずっと居たくなるような空間づくりに、自然素材を取り入れてみるのはいかがでしょうか。安全性や維持のしやすさなど、気になることはぜひご相談ください。よりよい空間作りをお手伝いできれば幸いです。
建築家 竹沢 孝浩
チーフ
完成した家は住まう人の五感に影響を与え続け、また成長・変容する余地を持っていなければなりません。家は住み始めてから本当の家になっていくのだと考えます。住宅設計を通して、住まう人のライフスタイル・想いをより美しく具現化するお手伝いをさせて頂きます。
メソッド
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