ペットと共に暮らす家を考えるとき、人間だけが暮らす住まいとは異なる配慮が必要です。今回は、猫との暮らしを想定した家について考えてみましょう。
猫は犬と異なり、自由に動き回り、高所に登ることを好むため、その性格や習性を家の設計に反映させることが重要です。では、どのようにすれば猫と人間が共に快適に暮らせる家を作ることができるのでしょうか。本記事ではS様邸の実例をもとに、猫との生活を楽しむための家づくりのポイントを解説します。
語り手:テラジマアーキテクツ 建築家・伊澤 杉人
猫と暮らす家づくりのための4つの基本ポイント
1. 猫の動線をデザインする
2. 快適なトイレスペースの確保
3. 「ニャルソック」のための窓
4.傷に強いインテリア選び
まとめ:猫の習性を考慮して、共に心地よく過ごせる住まいを
1. 猫の動線をデザインする
猫は活動的で好奇心旺盛な動物です。そのため、猫が自由に動き回れる空間をデザインすることが大切です。キャットウォークや高い棚、隠れられる場所を設けることで、猫がストレスなく過ごせる環境を作ってあげましょう。
S様邸では、リビングの吹き抜けを利用したキャットウォークを計画しました。猫の体の大きさに合わせて高さと幅を決め、スムーズに上り下りできる動線を思い描きながらデザインしました。
一方で、猫に入ってほしくない場所を適切に仕切ることも重要です。特にキッチンは、猫の侵入を制限する必要がある場所のひとつ。S様邸ではガラス扉でキッチンとダイニングを間仕切りすることで、空間の見通しを保ちながら、猫の安全面・衛生面に配慮しました。
また、猫が脱走しないように、玄関やベランダなどの危険箇所には、特別な工夫が必要です。S様邸では、玄関の土間と廊下の間に引戸を設け、猫が外に飛び出すのを防ぐ対策を施しました。猫の安全を確保しながら、自由に動ける動線を設計することが、猫と共に暮らす家に最も大切な要素です。
2. 快適なトイレスペースの確保
猫の健康のためには、トイレの環境づくりは非常に大切です。できれば静かで落ち着ける場所に作ってあげたいですね。
トイレ周りには猫砂や掃除道具を収納できるスペースも必要です。カラフルで細々したものが多いペットグッズは、上手く目隠ししながら出し入れのしやすいところに格納したいもの。S様邸では、洗面台の下にトイレと収納のスペースを確保しました。人目につきづらく、清掃もしやすい場所です。
床材にはタイルや耐久性のある素材を使用すると、さらに清掃性が高まります。
特にペット用のクロスや床材は、耐摩耗性や防汚性能が高く、猫が引っ掻いたり汚したりしても、簡単に掃除ができるようになっています。トイレの周辺だけでなく、家全体のインテリアにおいても、こうした機能性を備えた素材を選ぶことが望ましいでしょう。
3. 「ニャルソック」のための窓
ネコ飼いの方はご存知「ニャルソック」…、鳴き声とアルソックを掛け合わせた造語のようですが、猫が窓から外を眺める様子を上手く言い表してますよね。
猫が家の外で動くもの(人や車、鳥など)を見守ったり、外の様子をじっと見つめたりするのが、警備のためなのかどうかは分かりませんが、家づくりの際には、こうした猫の習性を活かし、外の景色を見渡せる窓辺を設ける「ニャルソックポイント」を意識してデザインすることが、猫にとって快適な家を作る一つのアイデアとなっています。
何より、外を眺める猫の後ろ姿はかわいらしいですよね。猫にとってはもちろん、共に暮らしている人間にとっても癒しを感じられる仕掛けになるのではないでしょうか。
4. 傷に強いインテリア選び
猫は爪とぎをする習性があるため、引っ掻きに強い家具や壁紙を選ぶ必要があります。現ペット対応のクロスや引っ掻きに強い生地が多く販売されています。例えば、ソファーやクッションには、耐久性の高いウルトラスエードなどの素材を使用することで、猫の爪によるダメージを軽減できます。また、壁紙にもペット対応の耐久性の高いものを使用し、猫が壁に爪を立てても傷つきにくい工夫を施すことが可能です。
猫の習性を考慮して、共に心地よく過ごせる住まいを
猫と共に快適に暮らす家を作るためには、猫の習性やニーズをしっかりと考慮することが必要です。猫が自由に動き回れる空間を提供し、トイレスペースや窓辺などのリラックスできる場所を設けることが、猫との生活をより快適にします。また、猫に優しいインテリア選びや家具の配置にも配慮することで、家全体が調和の取れた快適な空間となります。
猫と暮らしている方、これから猫を飼うことを考えている方は、この記事で紹介したポイントを参考にして、猫と人が共に幸せに暮らせる家づくりを目指してみてはいかがでしょうか。
建築家 伊澤 杉人
他の建築に比べて住宅建築というのは、住まい手のひとりひとりに合わせた設計・デザインが求められ、それが住宅設計の魅力でもあります。自らも楽しみながら、クライアントの方にも家づくりのプロセスを楽しんでいただけるような仕事をしたいと思います。
メソッド
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