住まいのあり方が多様化し、それぞれの価値観、ライフスタイル、またライフステージに合わせて、選択肢は広がり続けています。こうした中、「自分らしい家をつくること」の魅力を、また「自分らしい家で暮らすこと」の価値を、あらためて多くの方に知っていただきたい――そんな思いから、「More Life Lab.」は生まれました。

生き方・暮らし方を自ら定義し、つくり上げようとする人。
その価値観に賛同し、肯定したい。

上質と個性を重んじ、人生を通じてそれを謳歌したいと願う人。
その思いに寄り添い、実現を後押ししたい。

家が人に与えてくれる幸せや可能性を誰よりも信じ、住まいに対するお客さまの思いやこだわりと誰よりも深く向き合ってきた「家づくりのプロ」として。上質かつ自分らしい家で、心満たされる豊かな暮らしを送りたいと考えるすべての方に、家づくりにまつわる知識と教養をお届けします。

ロゴマークについて

「M」の右斜め上に伸びるラインが象徴するのは、「もっと自由に、自分らしく」という、住まいづくりの考え方。左下へ伸びるラインは、光と風のベクトルを表し、自然を取り入れる暮らしの心地良さを連想させます。上下に広がる造形が、「もっと自由に、自分らしく」と望む人の周りに広がる空間の存在を感じさせます。


Presented by TERAJIMA ARCHITECTS

テラジマアーキテクツは、創業以来60年にわたりデザイン住宅を手がけてきた、住宅専門の設計事務所+工務店です。
お客さまのライフスタイルに合わせたオーダーメイド住宅をつくり上げています。

東京都・神奈川県で家を建てることにご興味のある方は、下記のウェブサイトも併せてご覧ください。
建築家による設計・施工実例を多数ご紹介しています。
https://www.kenchikuka.co.jp/

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More Life
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[魅力的な住まいを考える視点]

住む人に適した換気と空調を考える

前回ご紹介したパッシブデザイン住宅と切り離せない関係にある空調設備。種類を大きく2つに分けると、室内全体を均一な温度に保つ全館空調と、部屋ごとにエアコンをつけて温度を調節する部分空調があります。それぞれの利点を考えながら、どちらを導入すべきなのか、また家を建てるまで意外と知らない換気の話を建築家の視点から紐解きます。

語り手:一級建築士 深澤彰司(株式会社テラジマアーキテクツCEO)

気密性の高い家に必要な「計画換気」。

1つの冷暖房機を使ってすべての部屋の温度を均一に保つ全館空調と、部屋ごとに冷暖房を設置する部分空調。双方にメリットとデメリットがあるため、建築士と相談しながら住む人に最適な方をお選びいただきたいのですが、まずは空調と関係してくる換気のことから触れておきたいと思います。

前回のパッシブデザイン住宅を説明した回で通風計画の話が出ましたが、それとは別に、気密性の高い住宅が一般的になってきたことを受けて、2003年7月に建築基準法が改正されました。シックハウス症候群を予防するため、窓を閉めた状態で1時間あたり0.5回、つまり2時間に1回、部屋全体の空気を入れ替える計画換気システムを設置することが義務付けられたのです。

計画換気には3種類ありますが、一般的な住居に使われるのは主に2種類。給気も排気も機械式で行う第1種計画換気と、給気は開口部から自然に行い、排気を機械で行う第3種計画換気です。

こう聞くとなんとなく難しそうですが、現在の集合住宅や住宅でよく見られるのは第3種計画換気です。壁に取り付けられた通気口から新鮮な空気を取りこみ、キッチンの上部にあるレンジフードや、トイレ・浴室の換気扇から汚れた空気を排出するタイプで、設置コストが抑えられるため導入しやすい利点があります。ただし、冬や夏でも外気をそのまま取り込むので、室温が外気温に影響されやすくなり、冬であればせっかく温めた温度がまた下がってしまうという欠点があります。

一方、第1種換気システムは24時間換気システムとも呼ばれており、給気と排気を機械で行うため、気密性の高い家においてより計画通りに換気を行うことができます。また、外気を取りこむ際に、一定の温度調節を行うタイプが主流であるため、冬や夏でも室温を保ちやすいことも利点です。

この第1種換気システムを用いながら全館空調をご希望である場合、外気を取りこむダクトを兼ねることで、あらかじめ一定の温度に調節された外気を全館空調で適温にすることも可能です。そうなると別々に設置するよりも省エネ効果が得られるでしょう。

デメリットとしては、第3種計画換気システムや部分空調と比べると、設置、稼働、メンテナンスに至るまでコストがすべて高くなることです。

全館空調と部分空調のメリットとデメリット

次に空調を比べてみましょう。まず全館空調とは、主に住戸の屋根裏や基礎部分に、パワフルな冷暖房機器をひとつ導入し、そこで調節した空気をダクトに通して全室内にいきわたらせるという方法です。

全室空調を備えたら冬や夏は24時間稼働させるのが一般的。家族が集まるLDKだけでなく個室や廊下、トイレや浴室などを同じ温度に保てるため、住む人はどこに行っても均一な温度のなかで過ごすことができます。メーカーによっては各部屋で細かく温度を調整することも可能です。

全館空調の最大のメリットはやはり屋内に温度差が生まれないことでしょう。特に高齢の方にとっては、冬場の温度差によって血圧が激しく上下するヒートショックを防げるので、「健康的」「身体にやさしい」冷暖房として認知されていますね。

その他の利点として、「結露やカビが発生しない」と思われているお施主さまもいらっしゃるのですが、それは全館空調であるがゆえというより、室内の空気が絶えず動いているから、つまりきちんと換気されているからだと思います。

全館空調のデメリットとしては、年に一回程度、専門業者でのメンテナンスが必要なこと、設置、ランニング、メンテナンスの面においてコストが高くなり、故障すると全室の温度調整ができなくなることが挙げられます。また、人がいない部屋まで常に冷暖房をすることになるので、SDGsが掲げられている現代社会において、果たしてその必要はあるのかという疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれませんね。

全館空調に対して、各部屋にエアコンを設置して、部屋ごとに気温を調整することを部分空調と呼びます。部分空調の代表的なものは壁かけ型のエアコンですが、部屋の美観を損なわない天井埋め込みタイプもあるので、デザイン面では全館空調と同等と考えられます。最大のメリットとしては、導入・設置が低コストであることだと思います。

全室空調は施工できる事業者を調べてから

家を建てることをご検討されるとき、最初から全館空調をご希望であるならば、施工できる事業者が限られているので、事前に調べておくといいかもしれません。著名なハウスメーカーであれば標準的に対応していますが、工務店では取り扱っていないところもあります。

また、全館空調機器は部分空調一台の大きさに比べて大型で、天井裏や室内に一定のスペースが必要となります。多少プランにも影響してきますので、住む方の望むライフスタイルにとってどちらの空調タイプが適しているのか、建築士に相談して進められるとよいでしょう。

多くの人にとって一生に一度となる家づくり。後悔のないように、気になる点や要望は何でも早めに相談されることをお勧めします。信頼に足る建築士であれば、お施主さまにとって良い回答が返ってくるはずです。

空調には大きく分けて全館空調と部分空調の2タイプがあり、換気計画とともに住む人の望む暮らし方によって選ぶと良い。全館空調を施工できる事業者は限られているので、導入の優先度が高ければ事前に施工可能か調べておきたい。

一級建築士 深澤 彰司

株式会社テラジマアーキテクツCEO

東京理科大学卒業。2004年テラジマアーキテクツ入社。建築家としてシンプルモダンや和モダンといった同社の代表的なテイストを確立。これまでに手掛けた住宅は300棟以上。デザインと生活空間の両立した住宅、お引渡し後も長く安心して住まえる住宅を目指し、使い勝手や動線に配慮した設計、お客さまと一緒につくる過程を大切にしている。

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