空間に個性をもたらすアクセントウォール
空間に個性を出し、新たな表情を加えてくれる「アクセントウォール」。空間のなかで他の部分と異なる色や柄、素材を取り入れた壁のことを指します。インテリアに強弱を付けたり、奥行き感を強調したり部屋のゾーニングに用いられたりと、取り入れる場面によって目的はさまざまですが、比較的容易におしゃれな印象をつくることができますので、挑戦してみたいという方は多いのではないでしょうか。
アクセントウォールには柄物のクロス、木やタイル、石などを貼るのが一般的ですが、年々新しい建材が発表されるなかで、面白い素材を使った事例がありますので、ぜひご紹介したいと思います。
Y様邸のリビングダイニングの一角に採用したのは、主にキッチンの天板などに使用されることが多い「ネオリス」という大型のセラミック板で、最先端の技術により生み出された美しい素材です。今回は、そのネオリスの一枚板を壁一面に貼りました。
黒を基調とした空間を彩る白いネオリスの壁
Y様邸のリビングダイニングは、「他の住宅にないような、個性的な空間にしたい」というご要望をもとにデザインされたモダンな空間です。テーマカラーを「黒」とし、床には大判の黒いタイル、壁にも黒い石を貼り巡らせました。
ネオリスを貼ったのは、エタノール暖炉を設置した一角です。
暖炉周辺には不燃性の素材を使用する必要があります。一般的にはタイルや石がよく用いられますが、今回は空間全体が黒系のトーンで統一されているため、暖炉付近の壁は白系かつすっきりとした素材のほうがうるさくなく、バランスがよいということで、タイルや石以外の素材を探していました。金属も不燃素材ですが熱伝導率が高く使うことができないため、初めてセラミックに挑戦してみることにしました。
ネオリスは、セラミックタイルのなかでも大判の製品です。今回はネオリスの一枚板を天井から床まで、壁一面に使用しました。ボーダー状の石を積み重ねた黒い壁に対して、一枚の大きな白い壁に見せることで、それぞれが引き立てあうような空間に仕立てています。
また、今回は暖炉の裏側にある玄関ホールの壁まで、囲むようにぐるりと貼りました。同じ素材を隣接する空間に貼ることで、空間同士のつながりを感じていただけるようにしています。玄関ホール側の壁には「アートを飾りたい」というY様のご要望を受け、壁面に作品を設置するための加工も施しています。
ネオリスは、現在キッチンの天板に最もよく使用されており、水に強く硬いということからとても人気があります。水廻りに限らず、家具や床、壁、外壁などどんな場所にでも使用することは可能ですし、今回のように一枚板を使う場合、タイルと違い「目地」がないため、汚れが気になりづらい、柄が途切れることがないというメリットもあります。さまざまな柄が用意されていますので、気になる方はショールームでご覧いただくのをおすすめします。
しかし大型になればなるほど施工時の搬入に工夫が必要になりますし、場合によっては現場で破損してしまうこともあるため、運搬方法や搬入経路を事前に打ち合わせておく必要があります。もし使いたいという場合は、家づくりの早めの段階でご相談いただくとよいと思います。
また、ネオリスに限ったことではありませんが、壁に何かを貼った上からアートやミラー、テレビ、スピーカーなどを設置したい場合には、予め下地のための加工が必要となる場合があります。あとから追加する場合、ピクチャーレールなどを付けて対応することもありますが、必ずしも希望通りに設置することができないこともあります。もし今回のY様のように飾るものが決まっている場合は、ぴったりの土台を検討しますので、早めに建築家にお伝えください。
素材探しのヒントはあちこちにある
Y様邸では今回ご紹介したネオリスのほか、壁面に石をはじめとしたさまざまな素材を張って空間作りを楽しんでいただきました。どんな素材を取り入れる場合でも、中途半端にならないよう、思い切って隅々まできちんと張ることが美しく仕上げるひとつのコツです。但し、一度貼るとはがすのは大変ですので、ぜひショールームに足を運んだり、さまざまなサンプルを比較したりして、本当に気に入ったものをお選びください。
個性的なインテリアのヒントは、住まいの実例に限らず店舗やカフェなどの商業施設にもあります。
どんな素材でも「これは商業施設用、住まいで使っているのを見たことがない」とあきらめる必要はありません。もし気に入ったものがあれば、建築家に写真を見せていただければ、近いものを探してご提案することができます。ぜひ普段の暮らしの中で、常にアンテナを張って「お気に入り」探しをしてみてください。
建築家 伊澤 杉人
他の建築に比べて住宅建築というのは、住まい手のひとりひとりに合わせた設計・デザインが求められ、それが住宅設計の魅力でもあります。自らも楽しみながら、クライアントの方にも家づくりのプロセスを楽しんでいただけるような仕事をしたいと思います。
メソッド
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