間取りから考える“つながり”のデザイン
去る2019年2月10日、外苑前の「カッシーナ・イクスシー」青山本店・2階のVIPルームにて、建築家・深澤彰司による家づくりセミナーが開催されました。
事前申し込みによる約20名のお客様にご来場いただき、会場はプライベート感あふれる特別な空間となりました。なかには熱心にメモを取ってくださる方の姿も。今回は「“つながり”のデザイン」をテーマに行われたイベントレポートをお届けします。

「上質な暮らし」の定義は千差万別
まずは、改めて「上質な暮らし」についての解釈について会場に質問を投げかけます。
たとえば陽の光が入って気持ちが良い、風が通り抜けて気持ちが良いということを感じられることは、上質な暮らしの要素のひとつだと思っています。耐震に留意した安心や安全もそのひとつです。
しかし、実はこの「上質」という価値観は、そうした普遍的なものだけではなく、その人そのひとによって個別に存在することもあるのではないか。生活習慣や今までの生い立ちなどにも影響し、人それぞれ違った「上質」の価値観を持っているのではないかと深澤は考えます。
“「普遍」という言葉の対義語に「特殊」という言葉があるように、特殊なケースごとにおいても適切な形や答えを導き出すことが、家づくりを通じて上質な暮らしを提案する本当の意味合いではないかと私は思っています。そのことを踏まえた上で、私たちは家づくりをすべきなのです。”
「人」「外部」「動作」の“つながり”
家を建てたいと考えている方々が実際に設計士に相談する際、 “つながり”という言葉をキーワードにして依頼される方はほとんどいないのではないでしょうか。だいたいのお客様は「中庭のある家が理想です」「開放的なLDKで過ごしたいです」など間取りを言葉として設計士に伝えるという方が多いと思います。もちろんそれで構わないですし正解なのですが、それを図面に落とし込む際に、設計士は“つながり”という言葉をキーワードにして考えるということが多いと言います。そして“つながり”ということに関して考えられる項目は主に3つ。それは「人」と「外部」と「動作」についてであると語ります。
“「人」というのは家族、友人、第三者とのつながり。「外部」は周囲の環境や景観、中庭などです。「動作」は家事、趣味、仕事など。これらを考えることが大切です。”
つまり、家族や友人など、家に集う人たちと一緒にどういう暮らしをしたいのか、外部の環境をどう取り入れた家にしたいのか、仕事や趣味を家に持ち込む際に、どう私生活を分けるのか。人やものに対し、どうつながりたいのかを考える必要があるのです。続けて深澤は、実際にテラジマアーキテクツの過去の建築実績の中から「人」「外部」「動作」とつながる物件を、間取り図や完成写真等を参照しながらレクチャーします。
例えば「人」でいうと、二世帯を大きな通り土間で仕切った物件が例に挙がります。通り土間は分離の機能があるほか、交流の場としての役割も担っているというものです。「外部」でいうと、敷地のポテンシャルを生かして借景を楽しむ工夫が挙げられました。景観と家とがつながる、ということです。「動作」は趣味や仕事を家とどうつなげるかということで、導線設計についての話を中心に取り上げました。会場の皆さんも実際の完成写真を見ながら、その出来栄えに胸を躍らせていました。
特殊とは、その人ならではということ
“つながり”の優先順位というのは、住まわれる方ご自身の生活、家族構成、周りの環境などによって、必ずしも普遍であるとは限りません。今回のセミナーの話を聞くと、世間で定義される「上質な暮らし」というものは一辺倒な定義だけで語ってはいけないということに気付かされました。
私たちはみんなが同じ考えを持っているわけではありません。言い換えれば私たちは一人ひとりが「特殊」な存在なのです。つまり、その特殊な部分と向き合い、それをきちんと形にすることが大切となります。そしてそれを考えた時に、「つなぎたいもの」と、「つなぎたくないもの」が出てくるのです。「つなぎたいもの」を形にし、「つなぎたくないもの」が極力排除した家というものが、あなたにとっての理想的な家となるのです。
そして最後に深澤はこう締めくくりました。
“特殊ということは、その人ならではである、ということです。そうしたことに、きちんと正面から向き合って誠実に応えられるパートナーを見つけて家づくりをしていただくことが、真の上質な暮らしへの近道なのではないでしょうか。”
皆さん自身の「上質な暮らし」を考えていただく際に、漠然と思い浮かべようとすると「普遍的」な事柄しか挙げることができないという方もいらっしゃるかもしれません。そういう時は「住まいを通じて何とつながりたいか」を考えてみてください。そこからあなたらしい住まいがイメージできるかもしれません。
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