2021年5月15日、「More Life Lab.」が主催する家づくりセミナーを開催いたしました。
会場はドイツのキッチンブランド・ジーマティックのショールーム。感染防止対策のため、ショールーム全体を貸し切りとし、広々とした一階のワンフロアに20名までとご来場人数を制限して行われました。
今回のセミナーのタイトルは「今こそ家」。ニューノーマルの時代、生活だけでなく働く・遊ぶ・学ぶなど、様々な要素が一つの家のなかで共存するのが当たり前となり、家で過ごす時間が増えたことで、住まいに求められる役割や機能は大きく変化しました。とある企業の調査によると、住宅を取得したいというモチベーションはコロナ禍を通じて非常に高まりを見せており、現在はまさに家づくりブーム真っ最中と言える状況。
そんな中、新しい暮らしに沿った家を建てるにはどうしたらいいか、頭を悩ませている方が多いと聞きます。暮らし方が変われば、必要な空間の構成が変わる――既存の住まいのかたちは、これからの家づくりには参考にならないのでしょうか。
そんな悩みに対し、上質な住まいに求められることの本質は変わっていない、と建築家・深澤彰司(以下:深澤)は語ります。
ポイントは開放性・安全・動線と、暮らしを豊かにする要素
いわゆる“自粛期間”の間、ずっと家の中にいることで窮屈な思いをした、在宅勤務中の家事負担についてストレスを抱えた、という声は非常に大きいものでした。自由に外出することができた以前の暮らしのなかでは気づかなかった(または見ないふりをしていた)「自宅の窮屈さ」が、コロナ禍によって浮き彫りになってしまったという方は多かったと思います。
しかし都市部の住宅においては、「自宅が窮屈である」という悩みはもともとよくあることだったのです。密集した住宅街で、隣家と窓が向き合っていてカーテンも開けられないリビングや、暗い玄関。都心部の住環境はそうでない地域と比べ、どうしても劣ります。
そんな中、快適を生み出すにはどうしたらいいか。
建築家として深澤がこれまでに大切にしてきたのは、光や風が感じられる、青空や緑を望めるなど開放性に優れていると同時に、防犯やプライバシーに配慮し安全に過ごせること。そして、家族とのつながりを感じつつ、干渉しすぎることのない適度な距離感を生み出すことです。これは、コロナ禍・平常時問わず、快適な住まいを計画する上で必要な要素です。
さらに、コロナ禍においては家族全員が常に家にいる、という生活が当たり前となり、前述のような家事負担の問題や仕事・勉強をする場所の確保、働く・暮らすの気持ちの切り替えなど、新たな問題が生まれました。
そうした悩みについては、例えば家族それぞれが自分のことを自分でできるよう、使いやすい機能を備えたキッチンや、集約された家事動線、普段は書斎やワークスペースとして、時には遊び場としてフレキシブルに使えるフリースペース、仕事中のランチを家族全員で楽しむためのアウトドアリビングなどのアイデアが有効です。
+αとして、家で豊かな時間を楽しめる趣味の空間――シアタールームや音楽室、トレーニング設備など、そのご家族の暮らしに沿った要素を盛り込むのも良いと思います。
本セミナーにおいては、様々な邸宅の写真や間取りを通じて、それぞれの住まい手のライフスタイルと暮らしに合わせた間取り、これからの時代にふさわしい住まいのかたちを多数ご紹介。快適な住まい設計のポイントやよりよい空間を生み出す様々なコツ・小技をお伝えしました。
住む人の価値観や暮らしに合っていることが上質な住まいの要件
ご紹介した実例はすべてがコロナ禍以前に計画・建築されたものでしたが、どの家の住まい手も「外出自粛は全く苦ではなかった」と話し、中には「家族と普段は取れないゆっくりとした時間を過ごせるから」と新しい過ごし方、楽しみ方を見出した方もいらっしゃいました。
本当に上質な住まいとは、住む人の価値観や暮らし方、生き方に合っている住まいを指すと考えます。
それは世の中の動きなどの外的要因に大きく左右されることなく、普遍的なものではないでしょうか。
そんな思いを込めて、このような言葉で深澤は講演を締めくくりました。
“せっかく家を建てるのに、例えば3LDK・・などの既存の家のかたちに合わせて暮らすことを想定している方がとても多い。特に注文住宅は、住む人の暮らしに合わせて作るべきもの。ぜひ多くの方に、これからどのように暮らしていきたいか、そうしたことをベースに住まいを考えていただき、より良い家や暮らしを叶えていただきたいと思います”
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