間接照明は地明かりとしても使える
空間をラグジュアリーに魅せる間接照明。夕暮れ時の空間を彩る演出として人気があります。
照明計画のなかでは補佐的な存在と思われがちですが、実は間接照明に使われる器具には照度の高いものが多く、上手に取り入れることで空間全体をふんわりと照らす地明かりとすることも可能です。真上から照らす直接照明と異なり、さまざまな方向からの壁からの反射が発生するため、手暗がりがなくなるなどのメリットもあり、読書や作業、または洗面所などに適した明かりになります。
今回は間接照明を地明かりとして取り入れたM様邸の実例をご紹介したいと思います。
家具を活かすための照明
M様は家具がお好きな方です。あらゆるブランドの家具を吟味した結果、採用したのはイタリア家具のMinotti(ミノッティ)のソファ、ダイニングセット、パーソナルソファでした。
Minottiの家具は重量感があり、中でもパーソナルソファはリビング、ダイニングの間のアイキャッチとして存在感を放っています。家具を美しく見せるためには照明自体を目立たせたくない、という思いがありました。そこで、灯体を見せるのはダイニングやキッチン上のペンダントライトのみとし、その他の照明の存在は感じさせないようにする、というコンセプトに決まり、空間の地明かりを間接照明中心で計画することとなりました。
M様邸のLDKは、間接照明の柔らかな明かりの効果で、ダウンライトを採用した場合に比べてより立体感と奥行き感が感じられる空間となりました。家具の質感、素材の陰影も一層際立ち、上質な雰囲気に仕上がっています。
M様邸のように間接照明を美しく見せるには「何気なく作る」ことが必要です。間接照明の灯体は壁際に沿うように配置されますが、しばしばカーテンボックスとの位置関係に頭を悩ませることがあります。存在を消すために天井を掘り込んで作る場合、構造躯体に関わってくることがあるため、理想のライティングのイメージがある場合は設計の最初の段階で建築家にお伝えいただくとよいと思います。また、間接照明はダウンライトに比べ費用がかかることが多いため、予算の配分についても最初から検討して頂くとよいでしょう。
特に細かな作業を行うことが多い場所では、間接照明の柔らかな光だけではなく強い光で手元を照らすダウンライトを併用したい、という場合もあります。M様邸ではダウンライトはキッチンの作業台の上部分のみとし、空間全体のラグジュアリーな雰囲気を損なうことがないように計画しています。ダウンライトの位置を決める際には、窓との位置関係など照明器具以外との関係性をきちんと考えておかないと、規則性のない配置になってしまい美しく見せることができません。建築家は平面だけではなく、立体的な空間のなかであらゆる要素の配置をバランスよく見せるために緻密に配置を計算し、計画していますので、細かな配置についてはお任せいただくのがおすすめです。
空間のノイズにならない灯り
住まいで用いられる照明器具には様々な種類があり、その場その場に適した器具を選択することでより心地よい空間を作り上げることができます。
今回ご紹介した間接照明はリビングダイニングのほか、寝室や玄関ホール、トイレや洗面化粧台まわりなど、様々な空間に似合います。灯体が見えるダウンライトと異なり、灯体を隠して設置する間接照明は空間のノイズになることがありません。シンプルモダンを極めた空間デザインを希望されるお客様と出会うことができたら、空間全体を間接照明で彩るような、ノイズの無いストイックで美しい空間をデザインしてみたい、と思っています。ご希望の方がいらっしゃいましたら、ぜひお声がけください!
建築家 鴨下 菜穂
チーフ
無機質な中にも優しさを感じられるもの、エッジの効きすぎている隙のないデザインよりも、クリアランスのあるものを好みます。住宅は人生を内包しています。お客様のライフプランに寄り添い、いつまでも愛してもらえる、耐久性を備えた設計を常に念頭に置いています。
メソッド
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