2019年10月6日、建築家・深澤彰司による家づくりセミナーが開催されました。会場となったのは創業70周年のイタリアを代表するモダンファニチャーブランド・Minottiのショールームのひとつである、南青山のMinotti Courtです。
当日はあいにくの雨で足元の悪い中でしたが、事前申込をされた多くの方にご来場いただきました。ラグジュアリーな空間でくつろぎながらも、みなさんしっかりと話に耳を傾けてくださっていたのが印象的です。今回は「都心で叶える快適な住まいづくり」をテーマに行われたイベントレポートをお届けします。

都心で暮らすには乗り越えるべき課題が多い
かつて家づくりは、住宅展示場に行くことで、最終的に押し切られるようなかたちでスタートすることが多かったと思います。最近はインターネット等でも情報や写真を自分の目で確かめられる時代になりました。
しかし、自分らしい家を建てたいと考えた際に「どういうことを考え、設計士や建築家にどういう話をどう伝えたらいいのかがわからない」というお客様の声をいまだに多く耳にします。そこで今回は、考え方のきっかけにつながる話になればと思っています。
まず深澤が語ったのは、はっとするような言葉でした。
“都心はいろんなものがあり魅力にあふれる街ですが、どこかのタイミングで土地の値段の付け方を間違えてしまったのではないかと思っている。”
今、都心では坪単価が300万を超えることもあります。そうなると、狭小住宅が増えるのは必然です。そして核家族化が進み、近隣との付き合いも少ない都心では、プライバシーの確保も課題として挙がります。周りの目が気になり、カーテンすら堂々と開けることが難しいのが、一般的な都心の暮らし方。庭やテラスをお金をかけてつくったところで、周囲を気にして思う存分活用することはできません。
開放感とプライバシーを叶える家づくり
家づくりを希望する方と打ち合わせをすると「開放感がある明るい空間にしたい」「近隣に対して気にしながら過ごすのは避けたい」という話がよく出てきます。開放感と周囲を気にすることは相反するような関係にありますが、そこが都心ならではの特殊な事情です。
昔の家は、縁側という中でも外でもない中間領域が空気層をつくる機能を持ちながら、開放的な抜けのある住空間がつくられていました。都心で同じような家を建てるのは難しいですが、テラジマアーキテクツでは「自然を感じる」「開放感」「暮らしやすさ」「くつろぎ」の4つを大切にしています。これらが日常的に体感できる暮らしを、さまざまな都心の制約の中でどういう風に表現していくか、それが設計者の使命です。
テラジマアーキテクツの物件の代名詞とされるのが、建物内部につくる大きな中庭です。セミナー中盤では、テラジマアーキテクツが過去に手がけてきた物件例を中心に紹介していきます。たとえば家の中に光を落とすためにつくる中庭の「光庭」。部屋数や家の広さを考えると、無駄だとされるものかもしれません。しかし、長く愛することができるほどの価値を感じてもらうには、こういう要素がとても大事になります。吹き抜けや前庭、スキップフロアなどの実例を交えつつ、住まわれる方の要望を叶えながら都心でどう快適な家づくりを実現してきたかが語られました。
家の価値はどれだけ心が満たされているか
上質な暮らしとは、心が満たされる暮らしのことだと深澤は考えます。
“建築は建てた瞬間が100点で、年々価値が落ちていくものだと思っていませんか。それではすべての建築物は経年劣化で負の遺産と化してしまいます。しかし、暮らしていく上で心が満たされるようなことがあれば、この価値は上がることもあるんです。”
何が心を満たすかというと、それは住まわれる方のパーソナリティにより変わってきます。ですから、家づくりはもっとわがままになっていいことなのです。自分の中にある要望を、箇条書きでもいいので言葉にして私たちに伝えてください。もう言い切った、と思えるほどお話いただいたほうが、最終的に心が満たされる住宅に近づくと思います。家の価値は、住まわれる方の心がどれだけ満たされているかで変わってくるのです。

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